日本生物地理学会 2013年度大会ミニシンポジウム

次世代にどのような社会を贈るのか?

2013年4月13日(日)15:00-16:30
立教大学14号館 D201号室(〒171-8501 東京都豊島区西池袋3-34-1)


[趣旨] (森中 定治)

  日本生物地理学会は,今から86年前にあたる昭和3年(1928年),山科芳麿博士, 黒田長禮博士ら当時の著名な鳥類学者の協力の下,鳥類学者の蜂須賀正氏博士と 東京大学理学部教授で生物地理学の第一人者であった渡瀬庄三郎教授によって設立されました.

  蜂須賀正氏博士は,平成15年(2003年)に日本生物地理学会が開催した生誕百年記念シンポジウムにおいて ”型破りの人” との評がなされましたが,自己の信念と哲学に基づいて時代を駆け抜けた人でありました. 渡瀬庄三郎は,区系生物地理学における旧北区と東洋区の境界を示す”渡瀬線”によって著名であり, 特定外来生物として最近問題になるジャワマングースを移入しましたが,当時困っていた野鼠やハブの被害を防ぐために 生物学の知識を社会に役立てようと積極的に行動した強いパワーの持ち主でありました. 日本生物地理学会創設者のこのような人となりを考え,学問を専門家の枠に留まることなく, 人類社会に活かすことができればと思います.生物学に関するフォーマルなシンポジウムの他に, このミニシンポジウムをもつのはこのような理由です.

  昨年私は,「プルトニウム消滅!」という著作を上梓いたしました.原発・エネルギー問題を切り口にしていますが, 生物学を土台に公共哲学,経済学を統合した一般向けの読み易い総合論で,我々人類の行く道(行く先) のひとつを明示しています.空想や願望論ではなくて,我々はプルトニウムを消滅させる実現性のある技術をもちます. その技術なくして,核兵器の廃絶は不可能です.原発については,世界的な核抑止戦略の停止と核兵器廃絶の基に, それを考えるべきだと思います.

  それには,経済学が深くつながっています.なぜ人は,必要以上に金儲けをしようとするのか. のんびりとヒツジを飼って暮らしている人達のところに朝から晩迄セコセコと働く人達が入っていって なぜその社会を変えてしまうのか.どの地においても,”ヒト”が生物として生を保ち,人間として社会を保っている. そのためにその地とその風土がある.必要以上のお金をなぜ集めようとするのか.地球上の水や資源,食料は有限です. 限度があります.エネルギーばかりあっても資源がなければそれは無駄になります.また, 必要以上の生産と浪費をしてそれから産み出された超大量の富を私人が集めてしまえば, 一方で生物としての生すら保つことのできない”ヒト”が出てきます.なぜこうなるのか,これを考えるには, それぞれの専門分野ではなくて統合論が必要です.我々人類はそれを考える時期を迎えたと私は思います.

  本年は,グローバル・タックス(国際連帯税)の日本の第一人者である横浜市立大学国際総合科学部の上村雅彦先生に 「持続可能な地球社会の創り方」と題して,現人類が迎えた大きな問題とその解決策について, また若い頃多くの人が手にした「ソフィーの世界」,あるいは「世界がもし100人の村だったら」などで著名な作家・ 翻訳家の池田香代子先生に「ふるさとのかけがえなさを未来へ繋ぐ」というテーマでお話し頂きます.

  私たちは, どういう社会を今後の世代に贈ろうとするのか,お二人の演者にリラックスして存分にお話し頂きたいし, 我々もまたリラックスしてお話を拝聴させていただきたいと思います.